谷崎潤一郎の名著「陰影礼賛」的感覚は、谷崎潤一郎の感性であるだけでなく、もしかしたら日本人的感覚と言えるのかもしれません。白くて光に満ちていて鮮やかなものも確かに魅力的ですが、この本には、暗い陰影にこそ美があるという趣旨のことが書かれています。その本で私にとって印象的だったのは、ロウソクのあかりだけの暗い夜の室内での、ロウソクのあかりに照らされた漆(うるし)の美についてです。大学時代の私には思いもよらない発想で、美の本質について感化されました。
そんな陰影礼賛的な美しさを、障子窓も持っているのではないかと思います。繊細な組子格子と障子紙による陰影と柔らかい光。そして、その光に照らされた無垢の檜の独特の艶。素材のよさが魅力を引き立てる本質の一つで、より陰影や柔らかい光を引き立ててくれていると思います。(ちなみに、この写真は「伊吹山を望む花火テラスのある家/岐阜県本巣市」の座敷の障子です。)